【小説レビュー vol.2】流浪の月【ネタバレなし】

2020年10月24日

綾人
こんにちは!綾人(@xjustchillingx)です。


今日ご紹介する1冊はこちら

流浪の月

作者:凪良ゆう
出版社:東京創元社
発売日:2019/8/29

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2020年の本屋大賞にも輝いた本作品。

善意とは何か?

相手のことを想い、気遣うその心はきっと美しい気持ちのはず。

しかし、その善意は扱い方を間違えると、時に毒となり相手の心を蝕んでいきます

"世間"が歪んでいるのか、"彼女ら"が歪んでいるのか、それはきっと読む人によって映る世界が変わります

"事実"と"真実"の狭間で複雑な人間関係に苛まれ、それでも自分達の居場所を探し出し、新たなる人間関係と旅立ちを求めた彼女たちの物語

願わくば、彼女たちの行く末に祝福を。

あらすじ

せっかくの善意をわたしは捨てていく。

そんなものでは、わたしはかけらも救われない。

愛ではない。けれどそばにいたい。

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。

わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。

それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。

再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。

新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

主な登場人物

この物語の主な登場人物です。

家内 更紗(かない さらさ)

物語登場時は小学生の女の子。

幼い頃に父を亡くし、母が居なくなってしまったことで叔母の家に預けられます。

両親と暮らしていた頃とは違う生活に息苦しさを感じており、そんな中、佐伯文と出会います。

また、叔母の息子である孝弘との間に起こった出来事を皮切りに、人生が大きく転がり始めます。

高校を卒業後は機械部品を扱う会社に事務員として就職しますが、中瀬亮との同居をきっかけに会社を辞め、ファミリーレストランでアルバイトを始めます。

そんな時、15年前に離れ離れになった佐伯文と再会することになります。

佐伯 文(さえき ふみ)

物語登場時は19歳の大学生。

"ある病気"を抱えており、生きづらさを感じています。

更紗と出会い、共に過ごしていく中でお互いに居心地の良さを感じ始めますが、その頃、世間では「家内更紗ちゃん誘拐事件」が報じられることになります。

そして15年の時を経て、運命の歯車が噛み合ったかのように更紗と再会することになります。

中瀬 亮(なかせ りょう)

更紗が文と再会する頃に付き合っている彼氏。

幼い頃に母が浮気をして家を出ていっています。

その後、父と祖母に愛情を注がれて育てられましたが、祖母からの母への悪口を聞きながら育ったため、母親という存在にトラウマを持つことになります。

また、母親が出ていった原因の一つに父親のDVがあり、自身の持つトラウマと結びつくことで、更紗を傷つけてしまう一面もあります。

谷 あゆみ(たに あゆみ)

文が更紗と再会する頃に付き合っている彼女。

心療内科に通っている時に文と出会い、付き合うことになります。

安西 梨花(あんざい りか)

更紗がアルバイトをしているファミリーレストランの同僚、安西佳菜子の娘。

更紗はシングルマザーである安西さんから、度々梨花を預かり、休日を一緒に過ごすことで仲良くなります。

ここが気になる!

アイラ
本作品を読み進める上で、押さえておきたいポイントを紹介します!

家内更紗ちゃん誘拐事件

更紗と文が離れ離れになる原因となった事件

誘拐事件は当時ニュースでも大きく取り上げられ、ネットが普及している作中の時代では、更紗が泣き叫んでいる現場の状況が動画として拡散され、人々の記憶に深く刻み込まれることになります。

これは事件から15年経った後も、更紗と文の人生に重くのしかかってきて、彼女たちの人生を狂わせます

善意は時として人を苦しめる

「家内更紗ちゃん誘拐事件」の被害者として、世間は更紗に善意を持って接します。

しかし、この"善意"こそが更紗を苦しめることになります。

事件発覚当時から15年経った今も、世間は彼女を"被害者"として認識しており、事あるごとに彼女に対して"善意"を持って接します。

生きるということに正解はない

本作品では複雑な人間関係と、登場人物一人ひとりが抱えている生きづらさが、これでもかというくらい緻密に表現されています。

"世間"が歪んでいるのか、"彼女ら"が歪んでいるのか、それはきっと読む人によって映る世界が変わります。

性別、年齢、関係性、これらは作中の人物だけではなく、読み手であるあなた自身の置かれている立場も複雑に絡み合い、本作品は完成するのではないでしょうか。

果たして本作品で描かれているものは、愛なのか。

きっとそれは、読み手の数だけ導き出される答えが存在します

そう思えるほどに、本作品で取り扱っているテーマは美しく、そして残酷です。

読後の感想

ボクが本作品を読み終えた時、喜びとも悲しみとも言えない、一言ではとても言い表せられない複雑な気持ちに包まれました。

名前を付けることができない感情、きっとこの感情を紐解いていくことが、生きるということなのかなと思いました。

本作品を読み進めていく中で、作中に登場する人物の抱えるトラウマや生きづらさと、読者の心が絡み合い、更紗や文の人生とゆっくりと解けて混ざり合うことでしょう。

彼女たちの生き方や想いに感情が揺れ動いた時、きっとあなたの心には優しく甘い毒が回っています。

そして、その毒は一思いに死ぬことを許してくれず、心地良ささえ与えてくれます。

しかし、向き合う事を忘れた時、きっとあなたの心を蝕む猛毒となってその存在を思い出すことでしょう。

本作品を手に取って、あなただけの答えを探してみてください。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

流浪の月

作者:凪良ゆう
出版社:東京創元社
発売日:2019/8/29

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